無輸血治療 その6

集中治療室での24時間体制での懸命の治療が施されていた。担当の麻酔科の先生もこんな低いヘモグロビンの数値にどうやって対処したら良いかと苦慮されたことだろうと推察される。

 先生から100%酸素の同意書にサインをお願いされた気がする。脳に酸素がいかなくなると脳死の状態になると。私は待合室で一番できることは祈りだった。あとは

他のICU患者の家族との会話だった。1人の方は18歳位の娘さんが風邪だと思ったところ、髄膜炎にかかっており、悪い状態とのことだった。ICU

で働いて下さっておられる医師、看護士の方々には感謝であった。  ふと、ある点が気がかりになった。以前「めざめよ」(エホバの証人の機関誌の一つ、もう一つの雑誌は、ものみの塔) に掲載された「鉄の肺」の経験だった。  ひょっとして、このまま、100%酸素を入れていると、 命は助かったとしても、肺の機能に障害が残るのではないかと。それで、事故当時は医療委員をおりていたので、当時の医療委員に高折益彦先生の連絡先を調べて頂いた。私は医療の素人なので、高折先生にこの状況で最善の治療のアドバイスを受けるためだった。先生はエホバの証人に関する無輸血手術の経験を数多くされていたからだった。先生は川崎医科大学を退官され、今は日赤の検診車で仕事をされておられることがわかった。  連絡がつかなかった2日が、とても待ち遠しく感じた。 ようやく連絡がついた。先生は直接、麻酔の担当の先生に電話して下さり、「今すぐ酸素の投入はやめた方が良い」と。この妻担当の若い麻酔医も、とても謙遜な方で 高折先生の提案に従ってくだだった。このお二方にも 感謝してもしきれない。