無輸血治療

無輸血治療 その7

集中治療室の面会は近い親族しか許可されていなかった。友人たちの見舞いは丁重にお断りさせていただいた。父が面会にきた。集中治療室で妻の顔色が土色なのをみた後、小声で呟いた。「ダメかもね」 しかし、15日間の集中治療室の後、一般病棟にも移され、ホ…

無輸血治療 その6

集中治療室での24時間体制での懸命の治療が施されていた。担当の麻酔科の先生もこんな低いヘモグロビンの数値にどうやって対処したら良いかと苦慮されたことだろうと推察される。 先生から100%酸素の同意書にサインをお願いされた気がする。脳に酸素がいかな…

無輸血治療 その5

セルセーバーというのは、術中回収式自己血輸血といって、 手術中に出血した血液をもう一度体内に還元させるシステム である。これは高折益彦先生(エホバの証人ではない)が開発 されたものである。 詳しくは、「自己血輸血マニュアル(高折益彦著)」に書…

無輸血治療 その3

あまりに妻の体調が思わしくないので、友人にワゴン車で迎えに来ていただいた。家に帰って、妻の友人たちが 見舞いに来てくださった。しかし、妻は話すのも辛そうだった。行きつけの病院の院長先生に往診をお願いしたが、都合が悪いらしい。友人の看護士が家…

無輸血治療 その4

その病院の迫田院長先生だった。先生には協力医のお願いに行き、何回か会談を設けて頂いていて、知り合いだった。私の高校の大先輩でもあった。人徳者でこんな夜更でも、ご自分が手術された患者を毎日見回りに行かれる方だった。なかなか出来ないことである…

無輸血治療 その2

**大学付属病院は全国に先駆けて、「エホバの証人に対する無輸血手術を受け入れる」と朝日新聞に発表してくださった。**脳神経外科の院長先生も受け入れを表明していて下さっていた。私達は、そのような偏見もなく、 協力を惜しみなく示してくださっているお…

無輸血治療 その1

今から24年前の11月のことだった。午前11時頃、突然私の電話が振動した。(いつもは教室には持参しないのだが) 知らない方からの電話だった。「あなたの娘さんと奥さんが事故に遭って、娘さんが頭から出血しています。今救急車を手配しました」私は感謝を言っ…